
僕は牛、豚、鶏、その他羊や鴨など、気に入ったお肉に出会ったら、できれば長く付き合いたいと思っています。
スーパーには「生産者の顔が見える野菜」というものがありますが、その食肉版と言えるようなお肉を食べていきたい。ある意味、肉については野菜以上に、顔が見える生産者のほうがおいしいことが多いのです。
例えばメジャーなブランド肉には何十という生産者がいて、生産者が変われば味が変わります。もちろん野菜でも同じことは起きますが、肉はその幅が大きい。同じブランドでも飼料や環境が違う生産者の肉なら味が違いますし、臭みが感じられがちなブランド肉さえもあります。
僕は湘南みやじ豚を10年以上前から食べています。さほど頻繁ではありませんが、取り寄せたり、外食だったり、さまざまな形で食べていますが、先日久しぶりに自分で取り寄せて驚きました。以前より明らかにコク深く、おいしくなっていたのです。
豚肉の味わいは脂身の味わいに左右されたりもします。脂身と赤身の間から立ち上る香りも重要です。コク深く、香りよく、味わいも深い。世間には、酸化臭などが気になる肉もありますが、最近取り寄せたみやじ豚からはただただいい香りだけが立ち上っていました。
湘南みやじ豚はとうもろこしを飼料に含めず、その他の穀物も相当バランスに気を使った飼料設計をしていました。さらに同じ部屋で育てるのは同じ母豚から生まれたきょうだい豚だけと肥育環境にも工夫をしていましたが、しばらく取り寄せていない間にまた新たなノウハウが積み上がったのでしょう。
味の違いがわかりやすいのはしゃぶしゃぶでしょう。お湯の温度を65〜70℃に設定すれば昆布出汁もひく必要はありません。ロゼ色になる程度に加熱して、精製塩をぱらりと振るだけでもコク深い味わいが口の中に広がります。
一般向けの通販なのにスライスの厚さが選べるのもうれしいところ。同じようにしゃぶしゃぶにしても薄切り、3mm、5mmという3種類でそれぞれ味わいが変わります。僕はしゃぶしゃぶにも3mmや5mmの肉を使いますが、少し厚い肉を65〜70℃の低温でじっくり加熱します。すると脂も肉もしっとり甘い風味が広がり、その間にあるすじを噛み込んでいくと味がぐんぐん伸びていくのです。
薄切り肉なら加熱した後、ご飯にどっさり乗せて醤油をひとたらしするだけでも、かっこむ箸が止まらなくなりますし、3mm厚のバラ肉を低温の煮汁で加熱して即席のチャーシュー風にしたり、5mmを回鍋肉のような中華風の炒めものにしたりと、厚さによって調理のバリエーションが無限に広がります。
土台の味わいが力強く美しい湘南みやじ豚なら、淡い味から強い味までどんな味つけでもきちんとおいしくなってくれる。家族経営で育てていますが、聞くところによると、養豚のノウハウはこの道50年というお父様の蓄積が大きいのだそう。どうぞいつまでもお元気で、さらなるノウハウを積み重ねて、ますますおいしい豚をお届けください。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

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