
スイーツジャーナリスト
長年愛される「定番」スイーツ紹介の連載、第33回は、金沢のぶどう園から誕生したお菓子ブランド「洋菓子工房ぶどうの木」の「緑のぶどうのクリームサンド」をご紹介します。長年、人気の品ですが、2021年春にリニューアル。今の時代に合った新たな3種類が登場しました。
はるか遠い産地との絆で生まれた緑のレーズンサンド
「ぶどうの木」は、1982年、創業者の本昌康(もとまさやす)氏が、金沢市北エリアのぶどう畑の中で始めた喫茶営業からスタート。

その後、敷地内にイタリアンカフェ、ウェディングのバンケットや洋菓子工房、豆菓子専門店などを備え、フレンチレストラン「レ・トネル ぶどうの木」は、『北陸ミシュランガイド2021特別版』でも話題となりました。
代表菓子「緑のぶどうのクリームサンド」は、これまでにも何度かリニューアルしながら、愛され続けてきました。

3種の味があり、「ラムレーズン」と「カカオレーズン」にはバタークリームと共に、明るい緑色の「グリーンレーズン」をサンド。「バニラレーズン」には黄金色の「ゴールデンレーズン」を挟んでいます。

これらは、シルクロードの先のアジアの国々から届く「トンプソンシードレス種」を干したもの。特に緑の「グリーンレーズン」は、中国新疆ウイグル自治区の「トルファン」地区で丁寧に手摘みされ、ゆっくり陰干しされるため、果実のみずみずしい甘みがギュッと凝縮。現地の生産者から直接購入し、彼らを応援しながら、信頼関係を育てつつ扱ってきた大切な素材です。
リニューアルのポイントは「社会とのつながり」
今回のリニューアルの一番のポイントは「美味しくて、私たちの社会にもおいしいもの」。
以前のサブレには、良質なフランス・ブルターニュ産のバターを使っていましたが、昨今の社会情勢の中で、できるだけ地元や日本の農家を支援しながら、美味しさを追求しようと考えるようになったと言います。
そのため、北海道産のバターと国産の小麦を使用したサブレに変更。アーモンドパウダーも混ぜてしっかりと香ばしく焼き込んだサブレは、存在感がありながら、サクサクと軽く口の中でほどけます。

「カカオレーズン」には、料理人・太田哲雄氏から届く「アマゾンカカオ」を採用。ペルーの小さな村で、丁寧に無農薬栽培される希少なクリオロ種ですが、太田氏は、このカカオの魅力を発信し、価値を高めて村を潤したいと考えています。
そんな思いに応えて、カカオのインパクトある香りと深いコクを楽しめる、大人のフレーバーに仕上げられました。

そして、こだわりのレーズンは、トルファン産の「グリーンレーズン」と、中央アジア・ウズベキスタン産の「ゴールデンレーズン」の2種。ウズベキスタンは豊かなフルーツの産地で、たわわに実ったぶどうを、太陽の様子を見ながら少しだけ天日干しすることで、ほどよいコクが加わった、金色に輝くレーズンが生まれます。
「バニラレーズン」は、お子様も楽しめるやさしい甘さのバタークリームとゴールデンレーズン入り。「ラムレーズン」は、ふわりと芳醇にラム酒が香るバタークリームと、ラム酒漬けグリーンレーズン入り。「カカオレーズン」は、「アマゾンカカオ」を使ったバタークリームと、ラム酒漬けグリーンレーズン入りです。

6個、12個、18個入りがあり、冷蔵便で届きます。夏場はひんやり冷たいままいただくのがお勧め。少し室温に置くと、バタークリームがふんわりとやわらかくなり、いっそう香り高く口どけよく味わえます。
生産者の方々を応援しながら、長くいい関係を続けようとする「サステナブル(持続可能)」なレーズンサンド。まさに、「農」を原点とする「ぶどうの木」らしい品です。手土産にも喜ばれることでしょう。