普段は手に入らない地方の名産品や、「こんなのあったんだ……!」といった美味しい驚きが楽しめるのが“お取り寄せ”。ただ、たくさんありすぎて、なかなかお気に入りのものを見つけられないという声もよく聞きます。そこでこの連載では、美味しいお取り寄せを知る料理家のみなさんに、おすすめの一品をお伺いします。今回は、料理ブロガー、レシピクリエイターとしてご活躍中の井筒早苗さんに、とっておきのお取り寄せを教えていただきました。
Q. 井筒さんおすすめのお取り寄せを教えてください
橘香堂の「むらすゞめ 8個入り」です。
Q. 創業以来人気の和菓子ですね。井筒さんがお気に入りな理由を教えてください
和菓子には珍しかった小麦粉と卵を使った和製クレープのような見た目、焼いた面を内側にすることで生まれる意外な食感と、丁寧に炊かれた粒餡の上品な甘さ、今でも一枚ずつ職人さんが手焼きで焼いているという心意気が大好きです。
倉敷生まれの倉敷育ちの私が気軽に購入できる場所に店舗があったことで、受験勉強の疲れや就職したぱかりの頃の苦労を、甘く優しい上品な味で癒してくれました。私にとって、がんばる元気をもらい続けた、お気に入りのお菓子です。
Q. むらすゞめのことは、どうやって知ったのですか?
子どもの頃から、贈答や手土産、おもてなし菓子として食べる機会が多いお菓子でした。地元では有名な、独特の拍子がクセになって覚えてしまうCM曲「むらすゞめ~橘香堂~♪」は、今でも耳に残っています。
Q. 実際にむらすゞめを食べたときの感想をお聞かせください。
「岡山」の土産ではなく、「倉敷」の土産として渡せるところが嬉しいポイントです。和菓子なのに小麦粉と卵で作られているという意外性があり、それでいて歴史も長いので、話のタネになりやすく、年齢や性別を問わず喜んでいただけます。
はじめて食べる方は、最初に見た目に驚かれることが多いです。焼いた面を内側に、ポツポツした面を外側にすることで生み出される食感と味わいは、他でなかなか出逢えないらしく、また買ってきてほしいと言われることがあるくらいです。
それとトレーに低い仕切りがあり、運んでいる最中に片寄ったり形が崩れたりを防いでくれる配慮もありがたいですね。
お取り寄せで食品を選ぶときの「マイルール」を教えてください。
お取り寄せは、その場所ならではのものを発掘したいので、地元の口コミを特に参考にして選びます。たまに食べたくてたまらなくなる郷里の味も、お取り寄せを活用します。実家に頼むのも申し訳ないし、間違いのない希望の品がきちんと届くのでとても助かります。
お土産には、実際にどんなものか自分でしっかりわかっている間違いのないものを選ぶようにしています。それから、お土産用とは別に小数入りのものをプラスして購入しておき、配り終えて落ち着いたあとで、わくわく、いそいそしながらあったかいお茶を煎れて、「うまぁ~、なつかしい~」と、自分でゆっくり味わうのが自分へのご褒美、至福の時間です。ナイショですが。
手作りにこだわる、創業以来人気の和菓子
井筒さん、ありがとうございました! 明治10年(1877年)創業の橘香堂は、全国菓子大博覧会で名誉総裁賞や内閣総理大臣賞などを受賞するなど、その品質の高さと味わいで人気のお店。銘菓「むらすゞめ」は、橘香堂の看板商品です。
厳選された小豆を丁寧に炊き上げて作られた粒餡は、甘さ控えめの優しい味わい。それを和製クレープのように薄く丸く焼いた皮で包んでいます。ひとくち食べると、それらが口の中で見事に溶け合う味わいが人気です。
岡山倉敷美観地区にあるお店では、むらすゞめの手焼きが体験できます。さらに通常のむらすゞめの大きさの約7倍という「ジャンボむらすゞめ」も作ることができるそうですよ。自分で作った焼きたてのむらすゞめは、格別の味わい。そして自ら作ってみることで、職人さんの技術の凄さに改めて驚くと思います。ぜひ一度、訪ねてみてくださいね。
ブログ:めろんカフェ