
スイーツジャーナリスト
長年愛される「定番」スイーツ紹介の連載、第53回は、1922年創業の「東京會舘」の代表菓子、「プティフール」をご紹介します。大正期に世界に誇る社交場として開業し、この味が生まれたのは戦後復興目覚ましい昭和期のことでした。2019年1月には新本舘がリオープンして話題に。懐かしくて新しいギフトとして、ホワイトデーや母の日にも人気です。季節限定プティフールも、時候のご挨拶にもぴったりです。
100年の歴史を持つ社交場、「東京會舘」誕生の物語
皇居からも近い東京都千代田区丸の内にあり、結婚式をはじめ、様々な宴会が催される「東京會舘」。世界に誇る社交場を目指し、1922年(大正11年)11月に開業しました。関東大震災や第二次世界大戦、戦後のGHQ接収など、数奇な歴史のうねりに巻き込まれながらも、本物の味とおもてなしに特化したスタイルを確立し、「社交の殿堂」と名を馳せるようになります。

開業当初から本格的なフランス料理を提供。初代製菓長の勝目清鷹氏が1950年頃に生み出したシグネチャースイーツ「マロンシャンテリー」も、多くのファンに愛され続けています。
レストランのデザートを家でも楽しめる「プティフール」のこだわり
昭和期、戦後復興が急速に進んだ1956年には、レストランのデザート菓子を家に持ち帰りたいというお客様の要望に応えて、テイクアウトできる焼き菓子類が登場しました。それらは、クッキータイプの「プティガトー」と、半生タイプのケーキ「プティフール」として、現在も受け継がれています。
定番の「プティフール」は、花の形に絞り出したクッキー2枚でプラリネクリームをサンドした「ソフトクッキー」と、チョコレートで飾ったパイナップル入りパウンドケーキ「ガトーアナナ」の詰め合わせです。

「プティフール」とは、フランス料理のコースを締めくくる小さな一口サイズのお茶菓子のこと。元々、その場で食べるものなので、焼き菓子やチョコレートでも、出来立ての味や食感が醍醐味です。この「プティフール」も、パティシエが手作りで丁寧に仕上げるフレッシュな食感を大切にしています。

時間を惜しまない手作りの工程から生まれる伝統の味
「ソフトクッキー」は、アーモンドをキャラメリゼしたものを細かく砕いてクリームと混ぜ、2枚のクッキーでサンド。サクッ、ほろっとした口どけに、アーモンドの粒々食感がアクセントに。

「ガトーアナナ」の生地に混ぜ込まれたパイナップルは、1週間から10日ほどかけて煮込まれたもの。毎日、朝夕、熱いシロップをかけて、じっくりと熱して冷まして、という工程を繰り返すことで生まれる、美しい琥珀色と繊維を感じさせないまろやかな口あたりが特徴です。チョコレートの味も、パイナップルの甘酸っぱさを引き立てます。

2種類の詰め合わせは、10個入、14個入、20個入、28個入があります。真空パックなどもされていないため、日持ちも製造から10日間程と短め。冷暗所で保存し、出来るだけ早めに召し上がるのがおすすめです。

定番以外にも、季節の素材や味わいを取り入れた季節限定のプティフールも人気です。春の詰め合わせは、ホワイトデーや春の贈り物にもぴったりですね!