
スイーツジャーナリスト
長年愛される「定番」スイーツ紹介の連載、第24回は、隅田川近くに本店を構える「菓匠 青柳正家(あおやぎせいけ)」の名菓、「栗羊羹」をご紹介します。淡く美しい色合いの羊羹の中に大粒の栗がたっぷり入った、秋にぴったりの一品です。
古くて新しい町で伝承される唯一無二の「栗羊羹」
「菓匠 青柳正家」は、1948年(昭和23年)に「青柳」として墨田区向島に開業。翌年開催された「第1回全国銘菓奉献結成式典」で、この店の菓子を大変気に入った海軍大佐・貴族院公爵議員の一條実孝公から、「正家」の名を賜ったそうです。現在の当主は三代目の須永友和氏が務めています。

店の代表菓である「栗羊羹」の箱には、「宮家献上」の文字と菊の御紋が入っています。お世話になった目上の方に差し上げるにもふさわしい品です。

向島は、18世紀以降、江戸の町の拡張と共に栄えた地域で、昭和初期には料亭街として活況を呈しました。今もそんな趣きある風情が残る一方、2012年には徒歩圏内に「東京スカイツリー®」が開業し、現代的な雰囲気も感じられます。そんな地域で愛される品として、すみだ地域ブランド推進協議会より、「すみだモダン 2014」の認証も受けています。
美しい色と一体感ある食感の秘密とは?
「青柳正家」の「栗羊羹」の最大の特徴は、上品な藤色の羊羹と、その中で黄金色に輝く栗の存在感です。原材料は砂糖と小豆、栗、寒天のみ。薄紫色に近い美しい色の羊羹は、丁寧に灰汁を取った十勝産の小豆で作ったこし餡がベース。見た目も透明感があり、味も濁りがなく、小豆の風味がクリアに感じられます。

菓子切りや黒文字でも、栗が引っかからず、羊羹と一緒にスムーズにすっと切れます。毎年、産地を選りすぐり、大粒の「銀寄栗」を自家製で炊いて作られる蜜漬けで、しっとりホクホクとしたやわらかさです。

大棹は、長さ20cm近くあり、食べ応え充分。開封前は常温で1ヶ月もつので、お遣い物としても重宝します。半棹サイズは、昔と違って家族の人数が少なくなったため、友和氏の代になって作られたそうです。4-6等分して2-3人でいただくのにちょうどいい大きさです。

生菓子タイプの「栗蒸し羊羹」と食べ比べも!
要冷蔵で日保ちが1週間の「栗蒸し羊羹」もあり、クール便でお取り寄せ可能です。明るい藤色やたっぷりの栗は共通していますが、小麦粉と葛を混ぜて蒸してあるため、よりもっちりした食感。適度な塩加減が、やさしい甘さを引き立てます。

保存は冷蔵ですが、食べる前に少し置いて常温に戻すのがお勧めです。乾かないようラップや蓋をして20-30秒ほど電子レンジで温め直すと、蒸し立てのようなもちもち感が楽しめます。
もう一つの代表菓である「菊最中」にも、こだわりの漉し餡が使われています。お取り寄せも出来ますが、店で購入したその日中にいただくと、皮のバリッとした香ばしさと、濃厚ながらすっきりとキレのあるなめらかな漉し餡との対比を味わうことが出来ます。
吟味された材料で丁寧に作られたシンプルな菓子の魅力を楽しんでください!