数年前より、「生姜党」や「ジンジャラー」など、生姜好き!を名乗る方々が急増しています。かく言う私もその一人。この夏、熊本市内で気軽にフレンチを楽しめる「ショコラカフェビストロ」さんが、生姜のお干菓子を新発売されたと知り、フレンチなのに?!と、意外性にびっくり。こちらの宮本シェフは、熊本の素材を使った地産地消のお料理を大切にされる方。私は、母が熊本生まれのため、何度かお店にも伺っています。
使用する生姜は、熊本県宇城市小川町・海東地区のみで作られる「きな生姜」。熊本県の生姜の生産量は、全国で概ね2位。その中でも特に、生姜の里として半世紀の歴史を誇るこの地域だけで採れる希少な「きな生姜」は、美しい黄色と強い香り、シャキッとした食感が特徴。農薬も一般的な使用量の半分以下に押さえた特別栽培品で、専門農家が一つずつ心を込めて育てています。
この香りを活かすために試行錯誤を重ねた宮本シェフ。土付きのものをお店で丁寧に洗浄し、なめらかな食感になるよう、繊維の向きにもこだわり横にしてスライス。香りを飛ばさないために4時間程度の短時間で乾燥できるよう、手で揉んで水分を抜くのも、大事な工程だそうです。重ならないよう鉄板に広げ、55℃~60℃という低温での温風乾燥。その際、揉み込んだ時に出た生姜汁を何回かに分けて霧吹きし、凝縮された香りの成分をさらにまとわせるのです。
こうして手間暇かけてしっかり乾燥させた生姜を微粉末に加工し、香川県の老舗和菓子店「寶月堂」さんの元で、上質な和三盆と合わせた香り高い干菓子を完成させました。和三盆のなめらかな口どけも損なわないよう、生姜の粉末の配合量は1%。だからこそ、この量で充分に香りが感じられる粉末作りにこだわったのです。
合わせ綴じ目で「きな生姜」の黄色を鮮やかに表現した、和の趣漂うパッケージには、蘭にも似た生姜の花と生姜をデザインしたマーク入り。包みを開くと、葉生姜をイメージした和紙包みが愛らしい。それを開くと、六角形の和三盆にも同じ柄が刻印された、オリジナリティのある打ち物となっています。口に含むと、舌の上でじんわりとけて、生姜の香りとほのかにぴりっとする辛みが広がります。まさに、香りの結晶、と書いて「香晶」という名前のとおり。かりりとそのまま噛んで味わうのはもちろん、温かい紅茶や、ぬる燗の日本酒、焼酎のお湯割りなどに溶かして召し上がっても、香りが豊かに広がります。
「ショコラカフェビストロ」では、やはり熊本県産の素材にこだわって開発した「玉ねぎの塩ジャム」も大人気。宮本シェフは、熊本地震からの復興支援にも熱心に取り組み、このジャムの販売金で、被災した子供達にバレンタインチョコレートを届けるといった活動もしてこられた方です。
熊本発信の熱い思いと美味しいものを届けたいという気持ち。私も、お世話になっている方に、この美しい生姜のお菓子を贈りたいと思います。