
スイーツジャーナリスト
長年愛される「定番」スイーツ紹介、第26回は、滋賀県に本店のある「叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん)」の代表銘菓「あも」をご紹介します。小豆とお餅の組み合わせに、心もほっこり。日本人の原点を思い起こさせてくれます。
「餡で餅を包む」という逆転の発想から生まれた新しいお菓子
「叶 匠壽庵」は、1958年に滋賀県にて創業。母が好きなお店で、よく都内のデパ地下の店舗で買い物をしていたので、私も自然とファンになりました。
代表銘菓である「あも」は、1971年に誕生。皮が薄くて口当たりのよい「丹波大納言小豆」をじっくりと炊いた餡がぎっしりと詰まった、棹物のお菓子です。
中には、とろけるようにやわらかな羽二重餅が入っています。世に無いものを創作したいと考えた創業者が、普通は餅で餡を包むところ、逆の発想で、餡に羽二重餅を包み込んで生まれたとのこと。
「あも」という可愛らしい名前は、宮中に使える女官達の間で使われた「女房言葉」で「あんころもち」のことを指す愛称からだそうです。
職人が手炊きする餡へのこだわり
確かに、羊羹とも粒餡とも異なり、ふっくらした小豆の粒を隙間なく寒天寄せにしたような印象で、さらりとした生地の中から、ほどけるように小豆がほろほろとこぼれてきます。軽やかだけれども豆の香りや味わいがしっかりする、それまでに食べたことのない不思議な和菓子です。
「あも」の餡は、小豆の粒が残るように炊くことが不可欠。ヘラを入れる回数をなるべく減らし、粒をつぶさないよう、釜の中で小豆が自然と踊るように炊くのがポイントだといいます。職人の方々は、その日の小豆の状態や、気温・湿度に合わせて炊き方を調整していらっしゃるのですね。
様々な味の季節限定「あも」も登場
「あも」は1本から購入でき、定番と季節限定品の詰め合わせセットも人気です。秋には、中の羽二重餅に焙煎した栗を練り込んだ「あも 栗」が登場。今シーズンは、来年の2021年1月初旬までの販売予定です。
続いて「あも 柚子」が、1月下旬頃までの販売となります。
2月初旬頃からは「桜」、4月初旬頃からは「蓬(よもぎ)」と、季節ごとの味わいが楽しめます。
もともと、小豆の赤い色には魔除けの意味もあると言われ、健やかに暮らせるようにという願いの込められた食べ物です。年末の数日のみ、「あも 白小豆」という品も店頭限定で販売予定だそう。もし出会えたら、何だかいい一年の始まりを迎えられそうですね。
「叶 匠壽庵」のギフトの掛け紙には、『万葉集』に登場する飛鳥時代の女流歌人、額田王(ぬかたのおおきみ)の歌が記されています。
滋賀に都があった7世紀の時代に、その情景を詠んだ「あかねさす紫野行き標野行き 野守は見ずや君が袖振る」というロマンティックな恋の歌など、古典文学がお好きな方なら、きっと喜んでくださることでしょう。お年賀をはじめ季節のご挨拶など、改まったお遣い物としてもお勧めです。






















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