長年愛される「定番」スイーツ紹介の連載、第27回は、日本で初めてクッキーを販売した「泉屋東京店」より、歴史と伝統を感じさせる「スペシャルクッキーズ」をご紹介します。宣教師夫妻から学んだレシピを元に、研究を重ねて生み出した味です。
子供達のために宣教師から学んだクッキー作り
「泉屋」のルーツは大阪の貿易商で、三代目の泉伊助・園子夫妻は、共にクリスチャンでした。大正2年から移り住んだ和歌山県で、アメリカ人宣教師、J・H・ロイド氏とその夫人に出会い、園子氏は、ロイド夫人が子供達のために手作りしていたスコットランド風の「クッキー」を、自分も息子達に作ろうと学び始めます。
自宅にもアメリカ製の高価なオーブンを発注し、研究と試作を繰り返した2人は、現在の「スペシャルクッキーズ」に入っている14種も含めた約30種類のクッキーのレシピを完成。
大正12年に移住した京都でもクッキーを焼き続け、昭和2年、「泉屋」の看板を掲げます。伊助氏が亡くなった後は園子氏が家業を継承し、昭和12年より東京に店舗を移転。その後、戦災を乗り越えて現在に至ります。
全14種の様々なクッキー、人気の「リングターツ」の秘密とは?
「泉屋東京店」の「スペシャルクッキーズ」には、「ピーナッツクッキー」「ココナッツクッキー」「チョコレートクッキー」「ウォルナッツクッキー」などに加え、細身にカットしたスポンジケーキを2度焼きしたサクサク軽い「サボイフィンガー」や、ソフトに焼き上げたクッキーでワインクリームをサンドした「レヤーボール」といった個性ある品も。「ブラウニーズ」や「フルーツバー」のようなしっとり生地タイプもあります。
中でも人気が高い「リングターツ」は、小さなドライフルーツを今でも手作業でのせて焼き上げているそう。このクッキーを見た園子氏の息子さんが「浮輪に似ているね。」と言ったことから、「泉屋東京店」のシンボルマークの浮輪が誕生したそうです。
どんな荒波に遭っても沈まない「浮輪」は心強いシンボル。母と3人の息子を表す4色の飾りをのせることで、困難にあっても“人の輪”で乗り切って行こうという強い思いも表しています。
時代に合った個包装や単品アソートパックスも
浮き輪の絵柄の缶入りクッキーは、7種類入から14種類入まであるので、用途や人数に応じて選ぶことができます。現在は、「浮世絵シリーズ」など限定のアート缶や、商品の売り上げの一部が補助犬育成と障がい者の社会参加の支援活動に役立てられる「盲導犬アート缶」なども販売。
個包装のクッキーが大きな紙容器に入った、シェアしやすい「カップインクッキーズ」も人気です。単品クッキーのアソートパックスもあり、お気に入りのクッキーを心ゆくまで味わうこともできます。
2020年12月には、横浜タカシマヤの増床に伴い、新ブランドのショートブレッド専門店「ショブレ」をオープンしました。伝統のレシピを元に、スコットランド発祥のショートブレッドを様々な形で現代的にアレンジした生菓子や焼き菓子が並びます。
歴史を継承したロングセラーの品も、時代に合った新しい提案も、それぞれ注目したいですね。