
スイーツジャーナリスト
長年愛される「定番」スイーツ紹介の連載、第49回は、神戸創業の老舗洋菓子ブランドより、知る人ぞ知るロングセラー品の「レーズンサンド」をご紹介します。私が初めて出会ったのは20年以上前ですが、それまで見たことの無い珍しいタイプだったので、とても印象的でした。
「アンテノール」の歴史
1978年、異人館の街、神戸・北野に誕生した洋菓子店「アンテノール」。「西欧に負けない、本物の味わいを」と、素材や製法にこだわった本格的な洋菓子店へと進化を目指し、今では、全国のデパ地下スイーツ売り場にも入る有名店となっています。

そのブランド名は、ギリシャ神話の知将に由来し、真摯に味の追求を行うアルティザン(職人)集団の誇りを象徴するものとして名付けられたそうです。
創業者の比屋根毅(ひやね つよし)氏が「日本一の洋菓子をつくりたい」と、兵庫県尼崎市に7坪の小さな洋菓子店を開いたのは1966年のこと。
当時の日本に洋菓子店はまだ数少なく、バタークリームのケーキが主流の時代でしたが、そんな中で、「生クリーム」にこだわり乳業メーカーとオリジナル生クリームを開発するなど、日本ならではの洋菓子を手がけ、地元の人たちに愛される店となっていきます。
そんな年月が、「たくさんの人に幸せをお届けしたい」という「アンテノール」誕生への原点になったのです。
サックリ、ふんわりの他に無い「レーズンサンド」
そんな「アンテノール」の「レーズンサンド」は、今から26年前の1996年に誕生し、時に配合を見直しながら作り続けられてきた品です。

「レーズンサンド」と言えば、一般的にはクッキー生地でサンドしたものが多いところ、こちらは、“ケーキのようなレーズンサンド”をイメージして、食感がふぅわりと軽く、なおかつ風味豊かなダックワーズ生地を採用。
しかも、よく見られる小判型のダックワーズではなく、絞り出した生地の模様が浮き出て、貝殻のような形をしているのも面白い、他に無い「レーズンサンド」となっています。
生地はアーモンドパウダーを主体に、小麦粉がほんの僅か入る配合で、軽くさっくりとした食感を生み出しています。
特に決め手となるのは、卵白と砂糖でふんわりと泡立てたメレンゲ。一番最近の配合や製法の見直しでは、生地の絞り方を変更してふんわり感をアップさせたそうで、伝統の味を大切にしつつ、常にブラッシュアップを続けているのです。

中に挟んだ白いクリームは、ミルク感とまろやかさを出すためにホワイトチョコレートをブレンド。暑い時期でなければ常温保管・持ち歩きできるのも重宝しますし、敢えて冷蔵庫に入れてひんやりさせても、“ケーキ感”をよりいっそう楽しめます。

レーズンは、ラム酒とブランデーを合わせた香りと深みのある洋酒に24時間漬け込んで使用しているそうです。以前は、細かく刻んでいたそうですが、現在は粒状で残し、レーズンとクリームの比率を7:3にして、レーズンのふっくらした食感も芳醇な風味も、存分に堪能することが出来ます。おやつとしてはもちろん、お酒のお供としても楽しめるお菓子です。

ヨーロッパの菓子を基礎としつつ、日本ならではの進化を遂げたオリジナルの「レーズンサンド」。オンラインショップでは、3個入、5個入、10個入、15個入と様々な入り数のギフトが揃うので、用途に合わせて選ぶといいですね。
