
スイーツジャーナリスト
私はチーズケーキが好きで、面白いチーズケーキがあると聞くと試してみたいと思うのですが、このお菓子の紹介記事を読んで、今、食の世界のトレンドとして注目される「熟成」を特徴としたチーズケーキと知り、興味を持ちました。
と言っても、流行にのった商品というのではなく、作り手である大阪のチーズケーキ専門店「トルクーヘン」の店主・岡本圭司さんが、特別な思い入れをもって開発したものだったのです。
岡本さんは幼い頃、将来はケーキ屋さんになりたいと夢を描いていたそうで、その後、縁あってドイツ・ハイデルベルクにある100年以上の歴史を持つ菓子店で修業し、その経験をもとにチーズケーキを作り続け、形になったのがこちら。
「ケーゼ・トルテ」とは、ドイツ語でチーズケーキのこと。フランスでは、チーズケーキはごく限られた地方の郷土菓子としてしか見かけませんが、ドイツでは伝統的にチーズケーキが作られ、日本に洋菓子文化が伝わった草創期のチーズケーキは、ドイツ菓子に影響を受けたとも言われています。
日本ではチーズケーキが大人気で、ベイクドやレアチーズ、スフレチーズなど、2〜3種類を揃えているお店も珍しくありません。ベーシックなアイテムですが、店ごとに様々な工夫を凝らしていて、奥が深いですね。
「トルクーヘン」の「ケーゼ・トルテ」は、元々、販売のためではなく、岡本さんにとって大切な一人の女性のために、3年間改良を重ねてきたものだと言います。
国産素材にこだわり、体にやさしい素材を厳選。北海道産クリームチーズや、鶏達に与える飼料や水、飼育環境も配慮された大阪のタナカファームの卵を使用。また、精製された砂糖ではなく、自然に近い状態のてんさい糖を使用したのは、体を冷やさないようにと相手を思いやる気持ちと共に、まろやかで優しい甘味によってチーズの旨味を最大限に引き出すためだそうです。
最大のポイントは、ケーキを焼き上げてから48時間10℃以下でキープする方法を取っていること。つまり丸二日間という長い時間を取って寝かせていて、確かに「熟成」という言葉がぴったり。
これにより一体感が出て、よりまろやかになるかと想像していたのですが、いただいてみると、チーズの酸味の輪郭がしっかり際立っていて、単にやさしい味ではなく、個々の素材が活かされつつも融合しているように感じられました。
濃厚な舌触りながら、生チョコレートのような口どけで、口の中からスッと消えていく食感を目指したというとおり、ベイクドタイプでありつつ、レアチーズケーキのようになめらかで、ずっしり重くもなくスフレチーズケーキのような軽やかな口どけも楽しめます。
大切な人のことを思い、熟成を経て生まれたチーズケーキは、ホワイトデーや誕生日など、アニバーサリーデーの贈り物にもぴったりですね。
Mサイズは直径12cmなので2〜3人で分けるのにちょうどいい量。ワインと共に味わうのも、素敵なひと時となりそうです。