おいしいマルシェ編集部が、いま気になるお店を徹底取材。おいしいものと、それにまつわる人たちの素敵なストーリーをお届けします。今回は古都・鎌倉の行列店です!
ここまで香りのいいチョコは初めて!

古都・鎌倉といえば、駅前からのびる小町通りでの食べ歩きははずせないイベントですよね。今、その小町通りで行列のできる店として話題なのが、鎌倉らしい和スイーツ、ではなく、チョコレート!じつは鎌倉には、生チョコやチョコスイーツを手がけるショップが次々とオープンしているのをご存じでしたか。その先駆けとなったのが、2014年にオープンした「ca ca o(カカオ)」なんです。

『日常の暮らしに上質なチョコレートを』というコンセプトで、店内で作ったできたての生チョコやチョコスイーツが楽しめる「ca ca o」。「お客さまには、チョコのとろける様子や香りも楽しんでもらえればと思っています」と、ショップをご案内いただいた広報の石原なつみさん。
試食用の生チョコをいただくと、本来のカカオがもつというフルーティーな香りにはっとさせられます。ここまで香りのいいチョコは初めてかも!それもそのはずで、使用しているカカオは、すべてコロンビアにある自社農園のもの。その稀少なカカオは、現地でフレッシュな状態のままクーベルチュールチョコレートに加工してから日本へ運ぶので、「たとえば、生チョコは『アロマ生チョコ』という名前でお出ししているのですが、フレーバーをつけなくても、カカオ本来のアロマティックな香りや味わいを感じていただけます」。
鎌倉でしか食べられない名作です
そのcacaoオープン当初からの人気メニューで、雑誌『BRUTUS』の日本一の手土産 チョコ部門でグランプリに輝いた逸品が「ca ca oエクレア」(税別400円)。ミルクショコラ、ホワイトショコラ、と2つのフレーバーがあり、約17cmとロングサイズながら、「じつは作るのにも一番時間がかかっていて、チョコが好きじゃない方でもペロリと1つ食べていただけます」。
その秘密は、全部で4層からなる贅沢な作りにあり。コロンビア産カカオを練り込んだエクレア生地のサクッとした食感にはじまり、同じカカオを練り込んだチョコ生クリーム、パリッとした板チョコ、さらにビターカカオのガナッシュまで隠れているこだわりよう。くどくなく、味のバランスのよさ、食感の違いまで大満足のエクレアなんです。
手づかみでも持ち歩きしやすい絶妙な太さで、小町通りを食べ歩くのにも◎。鎌倉でしか食べられない名作、これは必食です!

ちょうどキッチンでは、サクサクのタルトに贅沢チョコクリームたっぷりの「生チョコタルト」を準備中でした。

遠くコロンビアと日本をつなぐ青い海をイメージしたブルー。ショップの外壁、そして、スタッフの夏目さんをはじめみなさんのユニフォーム、よく見るとキッチンで使うクロスや手袋にもさわやかなブルーが。こういうさりげないこだわりも、素敵です。
キッチンの前には大きなガラス窓。お店の外で、そこにお子さんたちがはりつくようにしてスイーツが作られる様子を見ていることもしばしば、とか。「欧米の国々では、何でもない日にお花とチョコレートを買って家に帰るのはごく普通のこと。それくらい、日本でもチョコをもっと身近に楽しんでいただければと思っています」と石原さん。その思いは、着実に鎌倉に根づきつつあるようです。
味のある建物、じつは以前は…

そして、「ca ca o」が手がけ2018年1月にオープンしたばかりのニューフェイスが、駅の反対サイド、御成通りにある「CHOCOLATE BANK」。店名そのままに、もともとは銀行だった建物をリノベーションしたというショップなんです。言われてみれば、外観も銀行らしい味のある雰囲気が残っていますよね。

「CHOCOLATE BANKは、私たちがチョコでやりたいことを自由に形にできる場所に、という思いで立ち上げました」という遊び心いっぱいの店内は、コンクリート打ちっぱなしの壁に落ち着いた照明、銀行時代の金庫室は扉ごとそのまま、本物のチョコも使ってある巨大なゴリラのアート…。イートインスペースがゆったりとられ、まるでバーかラウンジのよう。
観光客はもちろん、ランチをしたり、手土産を買いに来たりという地元のリピーターも多く、週末には行列ができることもあるとか。店内にはスイーツ、そしてカカオ由来のコスメアイテムも並びます。このわくわく感、期待も高まります!
次の日に食べてもサクサクでした!

そんな「CHOCOLATE BANK」の看板メニューが、石原さんから「パン屋さんが作るのではない、“チョコレート屋さんが作るチョコクロワッサン”を考えました」とご紹介いただいた、1日700個を店内で焼き上げるクロワッサンのシリーズ。なかでも一番人気が、中にチョコクリームがたっぷり詰まった「チョコルネ クラシック」(税別500円)。コロンビア産カカオを使ったチョコクリームがこれでもか、と詰まったずっしり系のクロワッサンは、ひと口目から食べ終わりまでサクサクなんです。

中にクリームが入ったパンやスイーツって、その水分でしっとりしてしまいがちですが、「クロワッサンの層をふつうの3分の1ほどに減らして、その分、水分を含んでもサクサクした食感を保てるよう1つ1つの層を厚くしてあるんです」とそのこだわりを聞いてびっくり。(ちなみに、取材チームが買って帰ったチョコルネは次の日に食べてもサクサクでした!)

ミニサイズ(300円、税別)もあり、フランボワーズやバナナなどいろいろなフレーバーで楽しむのもよさそうです。
一緒におすすめいただいたアイスの「ショコラテ」(500円、税別)も、チョコスイーツとあわせてもごくごく飲めるすっきりした飲み口。それでいて、甘酒のように深みも感じるちょっと感動の一杯です。コロンビアでは毎朝コーヒーのかわりにチョコラテを飲むそうで、そんな現地の味を思わせる、カカオのフレッシュな香りも感じました。チョコミント、抹茶など季節ごとのフレーバーも人気です!
鎌倉でしあわせな“チョコのはしご”を

「今まで知らなかったチョコレートの楽しみを、わくわくしながら体験してもらいたいですね」という石原さん。シンプルな材料で安心していただけるチョコレートやスイーツは、石原さんのお子さんたちも大ファンとか。
ところで、石原さんにお話をうかがったこちらのお部屋は、ぶ厚い扉の奥にある銀行時代の金庫室。コロンビアへの恩返しに建てた子どもたちのための学校の写真や、ブックディレクター幅允孝さんのBACHセレクトによるチョコレートに関する書籍(絵本も!)に囲まれながら、こちらでもチョコルネやドリンクをいただけます。
曜日限定でチョコとお酒のマリアージュを味わうバーまで開かれるそうで、石原さんのおすすめは「柚子の生チョコと、甘口の白ワインの組み合わせ」とのこと。

「ca ca o」、そして「CHOCOLATE BANK」と、コンセプトの異なる2つのショップ。石原さんは、「国内外のお客さまが私たちのお店を目当てに鎌倉にいらして、スイーツやドリンクを手にここから鎌倉の観光を楽しむ、そんな場所になっていきたいです」とニッコリ。チョコ&チョコスイーツ好きなら、鎌倉でこのしあわせな“チョコのはしご”を楽しむよりほかに仕方ありませんね。
(撮影:さくらいしょうこ)

