
スイーツジャーナリスト
長年愛される「定番」スイーツ紹介、第37回は、岩手土産として有名な銘菓「南部せんべい」をご紹介!伝統の味を守る一方、有名ショコラティエの協力を得て、新感覚の商品も誕生しています。
愛される伝統の「おばあちゃんのせんべい」の味
岩手県二戸市に本店のある「小松製菓」は、「南部せんべい乃巖手屋(なんぶせんべいのいわてや)」という屋号で、岩手県名物「南部せんべい」を販売しています。
その歴史の始まりは、創業者の小松シキさんが昭和23年に始めた「小松煎餅店」から。私も、シキさんの自叙伝『むすんでひらいて』を拝読しましたが、ゼロから商売を興して困難にも挫けず明るく乗り越えていく姿に心を打たれました。
元々は、八戸、二戸、盛岡など、現在の青森県から岩手県にかけての旧南部氏の所領で、野戦食として戦国時代から食べられていた「南部せんべい」。農民にとっても大切な食糧であり、保存食やおやつとして、昔はどこの家でも囲炉裏端やかまどで焼いていたそうです。

シキさんは、12歳の頃に奉公に出た先で、鋳型に生地を挟み込んで1つ1つ手焼きするせんべい焼きの技術を覚えたそう。生地は小麦粉を使ったもの。実は日本では、お米を使うせんべいよりも、小麦粉を使うせんべいの方が、歴史が古いのです。

創業当時から続く「胡麻」せんべいは、1枚の中に約1000粒もの胡麻入りで、味わい深い香ばしさが特長です。砕いた落花生の実をたっぷり散りばめた「落花生」も定番の味で、皮付き落花生のカリッとした食感が魅力です。

甘酸っぱいりんごチップをのせた「林檎せんべい」も人気商品の1つ。さらに、さきいかをたっぷりのせた「いかせんべい」や、フリーズドライの納豆をのせた「納豆せんべい」といった、ちょっと驚きの味も! 生地がうすくサクッと軽い「うす焼」シリーズなど、バラエティ豊かなラインナップが揃います。

「南部せんべい」の生地はほんのり塩味ですが、甘いクッキー生地に落花生を丸ごと加えた「まめごろう」も人気です。少し厚みがあり、噛み応えがあるので食べた満足度大! 紅茶やホットミルク等にもよく合います。

冬場の人気商品「チョコ南部」、そのさらなる進化!
2009年には、落花生せんべいを細かく刻み、ピュアチョコレートでコーティングした「チョコ南部」も発売。秋冬時期の人気商品となりました。フリーズドライ苺を混ぜ、苺味チョコレートをからめた苺味も登場しています。

さらに進化版として開発された「チョコ南部PREMIUM」シリーズは、チョコレートの本場・ベルギーで開催される国際味覚審査「ITI」(International Taste Institute)にエントリーして、2017年より4回連続で、最高評価の三ッ星の優秀味覚賞を受賞。

味を監修しているのは、二戸市出身で、現在は東京・三鷹に自店「マ・プリエール」を構えるショコラティエの猿舘英明氏です。
フォルムもお洒落な「Tablet choco (タブレット・チョコ)」は、なめらかで口どけのよいミルクチョコレートに、香ばしい胡麻の南部せんべいを3.06mm以下に刻んで合わせ、キャンディコートして刻んだローストアーモンド、さらに岩手県産「のだ塩」、宇治抹茶、スパイスも加えています。

伝統銘菓が進化して、世界でも高く評価されているという快挙。創業者の小松シキさんに敬意を表するとともに、その想いを継承して現在に繋げている「小松製菓」さんに、エールを贈りたいですね!