料理に深みを添える体にもいい東京仕込みの黒酢/達人おすすめ!調味料 vol.3

真黒酢 500ml
甲斐みのりさん
(文筆家)
旅、散歩、お菓子、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。著書は『地元パン手帖』『お菓子の包み紙』など35冊以上。

「元々は木場の材木商が醸造会社をはじめて、それが今では江戸前の寿司職人に愛されている酢を作っているって、知っていました?」

あるとき、会うたび“おいしいもの”の情報交換をしている仕事仲間が、声を弾ませ駆け寄ってきた。

「この前、たまたま、この醸造会社のことをラジオで聞いて、すぐに取り寄せしてみたんです。はい、これ、お裾分け」と手渡されたのが、昭和12年創業の横井醸造工業株式会社の「真黒酢」。

私もわざわざお取り寄せするときは、せっかくだからと複数個注文して、よくお裾分けをしているけれど、なんとも嬉しい思いがけずの贈り物。子どもの頃は苦手だったお酢だけれど、年齢を重ねるにつれて、その味わいに魅せられていたところ。そんなとき台湾で好みの黒酢に出会って、お酢の中でも黒酢好きが加速しているタイミングだった。

真黒酢の瓶に添えられていたのが、商品説明をプリントした紙。「こだわりの製法で健康にもいいそうですが。難しい説明は苦手なのでこれを読んでもらうとして……何よりおいしいのが一番で、心からおすすめしたくて!」と、力強い口調に期待も高まる。

紙には、「ユニークな製法の固体発酵法による、まろやかで旨味が豊富な黒酢」という見出しの下に、細かな説明が書いてあった。

固体発酵法とは、原料を固体のまま湿らせて、半乾きの状態を保ちながら発酵をおこない、原料を非常に多く使用することで濃厚な味わいになる古代中国の製法。玄米や小麦など、通常の酢に比べて数倍の原料を使用し、じっくり発酵させたものを長時間寝かせて完成。たっぷりの原料に、時間と手間をかけている分、濃厚で栄養いっぱい、奥行きを感じるコクに仕上がるそう。

酢独特の刺激を感じず、黒砂糖を思わせる自然の甘さが特徴的。旨味が豊富で、水や牛乳、炭酸水で割っても飲みやすいと聞いて、家に帰ってさっそく試してみたところ、想像以上にまろやかな口当たり。疲れがたまった仕事のあとには、心身ともにキュッと引き締まる。

普段は、ごくごくシンプルな使い方で、餃子や麺類などを味わうとき、醤油代わりに活用している。真黒酢味わいたさに、夕食の献立に餃子が増えたほど。今度は、贈り主も試してみたという、鶏手羽元の真黒酢煮に挑戦してみたい。料理好きや、健康に気遣う友人への贈り物にも選びたい。

大本山永平寺御用達! 伝統と技術が守り続けられたお味噌「蔵」/達人おすすめ!調味料 vol.2

2019.02.19

古式製法で三百年の老舗が醸す極上醤油/達人おすすめ!調味料 vol.1

2019.02.04
真黒酢 500ml